定期テスト前になると、教科書や授業プリントを読み直し、きれいな「まとめノート」を一から作り始める中学生は多いのではないでしょうか。しかし、テスト直前に「まとめるだけ」で終わってしまう学習スタイルは、学習効率が上がりにくいことが指摘されています。
本記事では、学習科学の知見を踏まえ、定期テストに向けて、中学生が実践しやすい効果的な復習法について解説します。
1. 「まとめる」学習と「思い出す」学習の比較
教材をまとめる学習について、2011年にジェフリー・カーピッケ(Jeffrey D. Karpicke)博士らが行った興味深い実験があります。学生たちに科学の文章を学習させた後、以下の4つのグループに分けて1週間後のテスト成績を比較しました。
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1回だけ読む
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同じ文章を4回連続して読む
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文章を見ながら、概念同士の関係を図で整理する「コンセプトマップ」を作る
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文章を隠して、自力で内容を「思い出す(検索練習)」
結果として、テストの成績が最も良かったのは「4. 自力で思い出す」グループでした。 「3. コンセプトマップを作る」は、中学生が一般に作る「まとめノート」そのものを調べた実験ではありませんが、教材を見ながら情報を整理する学習と、教材を閉じて記憶から取り出す学習を比較した研究として非常に参考になります。また、同じ文章を4回連続して読んだグループよりも、「思い出す」練習を行ったグループの方が1週間後の成績は高くなりました。少なくとも、同じ文章をその場で何度も読み返すことだけが、効率のよい復習とは言えないことが分かります。
2. なぜ「直前のノート作り」は得点に結びつきにくいのか
なぜ、ノートをきれいにまとめても点数が上がりにくいのでしょうか。それは、教科書やノートを見ながら整理している間は、答えとなる情報が目の前にあるため、「記憶から自力で取り出す」練習になりにくいからです。
ノートをまとめること自体が悪いわけではありません。しかし、テスト直前に一から作り始めるのは、例えるなら「テスト前に自分の部屋の掃除を始める」のと同じです。作業の充実感は得られますが、直接的な得点力には結びつきにくいと言えます。
3. 学習科学が推奨する「検索練習」
2013年に発表された学習法に関する大規模な研究レビュー(ダンロスキーら)でも、「検索練習(自力で思い出す)」と「分散学習(一度にまとめて終わらせず、時間を空けて複数回取り組む)」が高い有用性を持つと評価されています。
本記事では、このうち定期テスト前にすぐ実践しやすい「検索練習」に注目します。 当塾ではこの知見に基づき、ノートにまとめる作業(インプット)は知識を整理するために普段の授業中や授業後に行い、テスト直前は自力で答えを出せるか確認する作業(アウトプット)に時間を割くべきと考えています。
4. 特別な勉強法は不要。「いつものワーク」を活用する
「思い出す練習(アクティブ・リコール)」と聞くと、何か特別な勉強法のように感じるかもしれません。しかし、中学生の定期テスト対策なら難しく考える必要はありません。いつも使っている学校ワークや問題集を、答えや教科書を見ずに解くこと自体が「思い出す練習」になります。
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社会: 用語を見るだけでなく、その背景や理由を自力で説明する
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英語: 日本語や意味を手がかりに、英単語・熟語・重要表現を自力で書く
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理科: 実験の結果だけでなく、「なぜそうなるのか」を説明する
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数学: 間違えた問題を、答えや解説を隠した状態でもう一度自力で解き直す
ただ用語を書き写すのではなく、答えを隠した状態で、自分の頭から正しい答えを取り出す練習を繰り返すことが重要です。
5. まとめ:テスト前は「まとめる」から「自力で答える」へ
テスト勉強において大切なのは、作業の美しさではなく「自力で答えを出せるか」の確認です。「まとめるだけ」の学習から卒業し、本を閉じて思い出す習慣をぜひ取り入れてみてください。
なお、今回は「どのように復習するか」に焦点を当てましたが、ワークを「いつ、どのくらいの間隔で繰り返すか」も学習効果を大きく左右します。「ワークは何周すればよいのか」「同じ日に何回も解くのと、日を空けて繰り返すのでは何が違うのか」といった疑問については、次の記事で学習科学の研究をもとに詳しく取り上げます。
【参考文献】
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Karpicke, J. D., & Blunt, J. R. (2011). Retrieval Practice Produces More Learning than Elaborative Studying with Concept Mapping. Science, 331, 772–775.
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Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14, 4–58.
