学習塾の春期講習というと、「前学年の総復習」をイメージする保護者様は多いのではないでしょうか。新学年を迎える前に、これまでのつまずきを解消しておきたいと考えるのは自然なことです。
しかし当塾では、春期講習の時点では総復習を中心とするのではなく、原則として「新学年内容の先取り」を優先しています。 これは決して復習を軽視しているわけではありません。復習を行う「時期(タイミング)」を意図的に後ろへずらしているのです。本記事では、当塾が春期講習で先取りを優先する具体的な理由と、春に先取り学習を行った中1生3人の数学の学力推移の事例をご紹介します。
1. なぜ春期講習で「先取り」を優先するのか
当塾が春期講習で先取りを重視する理由は、春だけを見るのではなく、1年間の学校進度と定期テスト日程から逆算して学習時間を配分しているからです。
① 年間スケジュールから逆算し、春に「時間の貯金」を作るため
当塾周辺の中学校では、年間を通して定期テスト1回あたりの学習範囲が同じというわけではありません。 当塾が昨年度、近隣中学校の中1の定期テスト範囲を過去3年分集計したところ、1教科あたりの教科書範囲を見ると、おおむね6月の第1回が約20~30ページ、9月の第2回が約40ページ、11~12月の第3回と2月の第4回はそれぞれ約60ページでした。もちろん学校・教科・年度によって差はありますが、後半になるほど一度の定期テストで扱う範囲が広くなる傾向があります。
特に学習上の負担が大きくなりやすいのが、第2回と第3回の間です。第2回の定期テストは9月、第3回は11~12月頃に行われますが、その間には夏休みのような長期休暇がありません。それにもかかわらず、第3回では約60ページ分が試験範囲となります。
そのため、当塾では夏休みのうちに11~12月頃までの予習も進めておきたいと考えています。しかし夏期講習では、予習だけを行うわけではありません。9月の定期テスト対策に加え、それまでに学習した内容の総復習も必要です。 そこで、さらに前の春までさかのぼって学習時間を確保します。当塾では基本的に3月(中2・中3は2月の学年末テスト後)から新学年の予習を始め、春期講習中に夏休み前までの内容を一通り学習することを目標としています。4月の通常授業では、確認テストや必要な復習を行いながら少しずつ先取りを続け、5月は6月初旬の定期テストに向けて、ほぼ1か月をテスト対策に使います。 そして第1回定期テスト終了後から夏期講習にかけて、それまでの総復習、9月の第2回定期テスト対策、11~12月頃までの予習を並行して進めます。
つまり、春期講習で先取りをする目的は、単に「学校より早く進むこと」ではありません。秋以降に復習・定期テスト対策・新しい単元の学習が重なっても、一つひとつを急いで処理しなくて済むよう、年間の早い段階で時間的な余裕を作っておくことにあります。
② 先取りの貯金があるから、「理解するまで進まない」を維持できる
当塾の授業は、「確認テストに合格したら先に進む」仕組みを採用しています。理解できていないのに先に進むことはありません。 それは逆に言えば、「テスト範囲を終わらせるために、理解が不十分なまま無理やり先に進める」といったペース調整をしないということです。学校の進度から遅れることなく、この「合格するまで進めない」という質を担保したペースを維持するためにも、春の段階で先取りをして学習上の余裕を持たせておく必要があるのです。
2. 春入塾・中1生3人の数学偏差値推移
では、実際に3月に入塾し、上記の「先取り優先」の年間スケジュールで学習をスタートした中1生3人の、4月から7月にかけての模試(総進テスト)における数学偏差値の推移を見ていきます。



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生徒A:数学 46 → 56 (+10)
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生徒B:数学 55 → 61 (+6)
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生徒C:数学 51 → 57 (+6)
3人とも4月時点の数学偏差値は異なりますが、7月にかけてそれぞれ数学偏差値は上昇しました。この期間、当塾では春期講習で新学年内容を先取りし、学校開始後は、学校進度に対して確保できた余裕を使いながら、定着確認や必要な復習、問題演習を進めていました。
3. (参考)5科総合偏差値の推移について
なお、本記事の主題は、春に先取り学習を行った3人の数学の学力推移ですが、参考として同期間における3人の5科総合偏差値の推移も併記しておきます。
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生徒A:5科 43 → 48
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生徒B:5科 51 → 60
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生徒C:5科 48 → 53
個別指導塾では、生徒によって受講科目が異なります。受講科目の学習が効率化することで、他の科目の家庭学習に使える時間が増えることもあり得るため、受講科目以外の変化と塾の指導を完全に切り離すことも難しいと言えます。一方で、5科全体の上昇を「すべて当塾の指導によるもの」と考えることも適切ではありません。
上記の5科偏差値は、あくまでこの期間における生徒全体の学力推移を確認するための参考データとして掲載しています。
4. 結論:学習の順序を入れ替えるという戦略
本記事の事例だけで「先取り学習をすれば必ず偏差値が上がる」と断定するものではありません。生徒によって最適な学習ペースや必要な復習量は異なります。
しかし、「春だから総復習をする」という固定観念にとらわれる必要はありません。当塾のように、まずは新学年の先取りで時間的余裕を作り出し、その余裕を使って着実に理解を深め、計画的に復習を組み込んでいく方法もあります。 こうした「学習順序の戦略的な入れ替え」によって、学校の進度に追われにくい学習環境を作ることも、当塾が重視している方法の一つです。
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