※本記事は、2019年度に当塾で指導した生徒の事例です。現在の北海道公立高校入試制度とは一部異なる部分がありますが、本記事は現在の制度を解説するものではなく、「受験する都道府県に合わせて指導内容や学力把握の方法をどのように変更したか」という個別対応の実例として紹介するものです。
個別指導塾において「一人ひとりに合わせた対応」という言葉は頻繁に用いられます。しかし、実際の指導においてどこまで個別の事情を反映できるかは塾によって異なります。
今回は、中3の7月に他塾から転塾し、翌春に北海道への転居と公立高校受験を控えていた生徒の事例を紹介します。千葉県の教室に通いながら、受験する地域に合わせて模試の選択、進路設計、使用教材を組み替え、最終的に札幌市立平岸高校へ合格した学習ロードマップを、当時のデータとともに解説します。
1. 中3・7月に転塾。千葉の模試における成績推移


まずは、入塾直後から秋にかけて受験した、千葉県の受験生を中心とする模試(総進テスト)における偏差値の推移を確認します。
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中3・7月:5科 53、数学 46
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中3・9月:5科 59、数学 54
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中3・10月:5科 60、数学 53
確認できる同一模試の範囲では、7月から10月にかけて5科偏差値は53から60、数学は46から53へと推移しました。
2. 受験地が北海道なら、模試と進路設計の基準を変える
千葉県内の公立高校を受験するのであれば、上記の模試結果をもとに進路を検討していくのが定石です。しかし、この生徒は北海道の公立高校を受験する予定でした。千葉県を中心とした模試だけでは、北海道の受験生の中での現在地や志望校との距離を十分に把握しにくくなります。
そこで当塾では、北海道の受験生向け模試である「北海道学力コンクール(道コン)」を取り寄せ、教室で受験する体制を整えました。
また、北海道学力コンクールを取り入れるとともに、進路判断の基準も北海道の入試制度に合わせて見直しました。 当初、ご家庭は札幌市内の別の公立高校を第一志望として検討していました。しかし、初回の面談では、当時の北海道公立入試で内申点(個人調査書の評定)がどのように選抜に用いられるのかを説明し、中1から中3・1学期までの内申状況を確認しました。その結果、学力検査の得点だけを伸ばせばよい状況ではないと判断しました。 その後の道コンの結果も踏まえながらご家庭と相談を重ね、最終的に本人・ご家庭が札幌市立平岸高校を受験校として選択しました。
3. 北海道学力コンクールでの推移
次に、北海道学力コンクール(道コン)における成績推移を確認します。


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中3・8月:5科 52.9、数学 45.5
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中3・10月:5科 50.5、数学 46.2
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中3・11月:5科 56.5、数学 46.6
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中3・1月:5科 55.9、数学 48.9
※なお、総進テストと北海道学力コンクールでは受験者集団や偏差値の尺度が大きく異なるため、両者の偏差値を直接比較する(例えば「総進テストの53から道コンの55.9へ上がった」と表現する)ことはしません。あくまでそれぞれの同一模試の中での推移として評価します。
道コンの推移を見ると、5科総合は8月52.9から10月50.5へ一度下がり、その後11月56.5、1月55.9と推移しました。数学は45.5→46.2→46.6→48.9と推移しています。
4. 目標に合わせた学習ロードマップと教材の調整
当時の学習記録を確認すると、この生徒は北海道受験に向けて、次のように学習内容を調整していました。
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入塾からの基礎継続
入塾時より、通塾日は毎回最初の10分間を英単語帳を用いた学習に充てました。また、定期テスト前には『教科書トレーニング』を使用し、内申点も意識して学校のテスト範囲の学習を優先しました。 -
7月〜9月:基礎固めと定着
夏期講習期間は『必修サマー』を用いて基礎事項を総復習しました。9月からは主教材を『WinPass』へ移行し、国語・数学・英語は『基礎力定着テスト』、理科・社会は『一問一答問題集』を併用して知識の定着を図りました。 -
10月〜12月:教科ごとの比重調整
国語は『WinPass』を進めつつ、代表的な古典作品を題材にしたオリジナルテキストで過去問レベルの古典演習を追加しました。 -
11月〜2月:裁量問題を見据えたテキスト選択
得意科目であった英語は、少し難度の高い『特訓テキスト』を使用しました。 数学については、当時の本人の学力水準を考慮すると、主教材をより基礎的なテキストへ下げる選択肢もありました。しかし、当時の北海道入試に設定されていた「学校裁量問題」に対応するためには一定の難度を維持する必要があると判断し、『WinPass』を継続しながら『合格BEST本』を併用して3年間の総復習を行いました。 -
12月以降:北海道の過去問演習
12月からは、北海道の公立入試過去問演習を本格的に開始しました。特に直近2年間分の過去問については、映像解説を活用しながらじっくりと解法を学習し、入試本番に向けた最終調整を行いました。その後、札幌市立平岸高校を受験し、合格しています。
5. 結論:「個別指導」とは教材を変えることだけではない
この事例で行った対応は、単に「生徒ごとに違う問題集を使った」というものではありません。
千葉県内の教室に通っているからといって、一律に千葉県向けの模試や進路基準を当てはめるのではありません。受験する地域が変われば、模試、教材、入試対策、進路判断の基準もそれに合わせて組み替える。これも、当塾が考える個別対応の一つの形です。

